惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「ユーリ・・・あんたねぇ・・・惚れ薬なんて、最初から存在しなかったんでしょ?」

「あら、当たり前じゃないの。やっと気付いたの?」

 しれっと言うユーリを、エリーゼは悔しそうに睨んでいる。
 その姿は肉食動物に小動物が噛み付こうとしている様に見える。
 可愛い。エリーゼが可愛い。

 それはさておき、確かに俺も最初は惚れ薬の存在など信じてなかった・・・が・・・。
 完全に冷静さを失っていたな・・・。
 悔しいが、最初からユーリの手のひらで踊らされてたという訳か・・・。

「どうせルーカスから手紙をもらったっていうのも嘘なんでしょ?」

「・・・なんだと・・・?」

 ユーリが俺から手紙をもらっただと・・・?
 そもそも、ユーリがなんで手紙の事を知っていたんだ・・・?

 疑問に思う俺の頭の中に、ある仮説が浮かんできた。

「ユーリ・・・どういうことだ・・・?まさか・・・」

「あら?なんのことかしら?」

 ユーリを問い詰めようと歩み寄る俺の前に、素早くダンが割り込んできた。

「ル、ルーカス!まさか人様の手紙を盗むなんて、そ、そんな事をユーリがするハズなななないじゃないか!」

「ダン・・・お前・・・何か知ってるな・・・?」

 さっきエリーゼが手紙の事を口にした時、コイツが1番顔色を変えていたのを俺は見逃さなかった。
 俺は何も言ってないのに「盗む」と墓穴を掘る様な発言も聞き逃していない。

「へ!!?いいいいや、僕は何も・・・」
 
 あからさまに動揺するダンを見て、俺の中の仮説が確信へと変わっていく。
 俺とエリーゼの関係を歪ませた張本人が・・・こんなに近くにいたとはな・・・。

< 192 / 212 >

この作品をシェア

pagetop