惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 ジルさんが扉をコンコンッとノックすると、扉がすぐに開かれた。

 扉の向こうには、数十名の参列している人達が長椅子に座ったまま、私達に視線を向けている。私が知らない人達は、多分ジルさんが言ってた騎士団の人達だろう。
 前の方には私の両親とルーカスの母親、そしてユーリとダンさんの姿も見えた。

 足元に広がる真っ赤な絨毯(じゅうたん)の先には祭壇があり、神父と思われる人物が立っている。

 歩き出したルーカスの足の動きに合わせて、私も一緒に歩き出す・・・が、思ったよりも歩くスピードが早い・・・いや、これはさすがに早すぎない!?

 ルーカスの腕にしがみつき、コケない様なんとか歩いていると、突然ルーカスは私を抱き抱えて早足で歩き出した。
 びっくりする私の耳元で、ルーカスは(ささや)くように告げた。

「すまない、エリーゼ。あの『せっかち神父』は早くしないと帰ってしまうらしい」

 ・・・いや・・・せっかち神父・・・って何・・・?

 先程から感じていた違和感の正体・・・それがなんとなく分かってきた・・・。

 祭壇の前まで来ると、ルーカスは床に私を降ろした。
 目の前にいる神父さんは、近くで見ると想像したよりもずっと年配のおじいさんだった。
 私達2人が整列したのを確認すると、神父のおじいさんはすぐに口を開いた。

「貴方達は、夫婦として死が2人を分かつまで共に生き、支え合うことを神に誓いますか?」

「・・・・・・あ・・・誓い・・・ます」

 思ったよりもずっと短く簡略化された誓いの言葉に、返事をするタイミングがちょっと分からなかった・・・。

「誓おう。だが死んでも俺達は一緒だ・・・あの墓石の中でな」

 そう言うと、ルーカスはフッと笑った。

 ・・・いや、フッ・・・じゃないわよ。
 そんなアドリブ入れなくていいから・・・。

「はい。じゃあこれで今日からお2人は夫婦です。どうぞお幸せに。では。」

 そう告げると、神父のおじいさんはそそくさと壇上から降り、年齢に見合わないほど素早く動いて帰って行った。

 ・・・はやっ!!え、今のでいいの!?神様いいんですか!?

 去って行った神父と入れ替わる様に、今度はダンさんがこちらへ走って来た。
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