惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「エリーゼ嬢、すみません。昨日お話した通り、この場はあと3分以内に空けないといけません。直ぐに出て下さい!後片付けは僕がしますので!さあ、早く!!」

「え、え・・・?」

「ああ、任せたぞ。」

 そう言うとルーカスはクルッと回り、参列者の方へ体を向けた。

「皆、今日は集まってくれて感謝する・・・では、解散!!」

「はい!!お疲れ様でした!!!!」

 参列者の大半を占めていた見知らぬ人達は、一糸乱れぬ動きでこちらに一礼して教会の外へ駆け出して行った。

 一番最前列にいた私のお母さんはこちらに満面の笑みを向けている。
 それとは対照的にお父さんは悔しそうに・・・うん、泣いてる。

「うふふ、エリーゼ綺麗よぉ。末永~くお幸せにね。これで母さんは安心して暮らせるわぁ。」

「エリーゼ・・・孫の顔はまだいいからな・・・ゆっくりで・・・急ぐ必要は無いんだからなああああ!!!おいルーカス!!結婚まで早いんだよ!!聞いてないぞ今日なんて!!おいっ・・・」

 叫び続けるお父さんの腕をお母さんがガシッと掴むと、引きずるように外へと連れ出した。

 その場に残っていたルーカスのお母さんが、私達の方へ歩み寄ってきた。

「エリーゼちゃん、ルーカスのこと、よろしくね。またいつでも遊びに来てね」

 そう言うと、ルーカスのお母さんは、私の左手を両手で優しく握った。

「あの時・・・ルーカスを守ってくれてありがとね。」

 涙を浮かべ、微笑むルーカスのお母さんの姿を見てハッとした。

 ここにもう1人、あの日の出来事に悩み苦しんでいた人物がいたんだ・・・。
 
 私はもう片方の手でルーカスのお母さんの手を握った。

「私の方こそ、ルーカスを産んでくれてありがとうございます。お義母さん。」

 私がそう言うと、ルーカスのお母さんは安心した様な表情を浮かべ、私をギュッと抱きしめてくれた。

 そんなやりとりをしてるとは知らないダンさんが、何か言おうと駆け寄ってきた瞬間、ルーカスに勢い良く投げ飛ばされて消えていった。

 ・・・さすがにもう時間が無いようなので、私達は早足で教会を後にした。
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