惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 その時、フワッと体が宙に浮いた。ルーカスが私の体を抱き上げたのだ。
 私を抱き抱えたまま、ルーカスはベッドの端に腰を降ろし、その膝の上に私を降ろした。
 その瞳が私を愛しそうに見つめたかと思うと、先程ルーカスが持ってきたテーブルワゴンの上へと視線を移した。
 ルーカスは私を膝に乗せたまま、そちらへ手を伸ばして葡萄を1粒摘み取り、私の口元へと運んだ。

「エリーゼ・・・あーん・・・だ」

 ルーカスは優しく微笑みながら、期待に満ちた眼差しを私に向けている。
 
「あ・・・あーん・・・」

 口を開けると、葡萄がゆっくりと中に入ってくる。それをパクッと口で摘み、かじると口の中は葡萄の甘い果汁で満たされた。

 甘い・・・美味しい・・・。

 葡萄を味わっている私の前に、今度は1口サイズに切り取られた桃が運ばれた。その桃に刺さったフォークを握り、ルーカスはどこか真剣な表情で私を見つめている。
 その眼差しにドキドキしながら、私は口をあけて桃を受け入れた。
 その後もルーカスの手は止まらず、私は次々と目の前に運ばれてくる食べ物をひたすら食べ続けた。

 これも美味しい・・・ああ・・・幸せ・・・。

 ひっきりなしに運ばれてきた料理が、急にピタリと止まった。
 どうしたのかと顔を上げ・・・私は思わずギョッとする。
 私の視線の先では、息が荒くなり、顔を赤く染め熱を帯びた視線で私を見つめるルーカスの姿・・・

「ルーカス・・・?ど、どうしたの?」

「ああ・・・エリーゼ・・・!!今すぐ君を食べ尽くしたい!!」

 次の瞬間、ルーカスは私を抱き抱えて立ち上がった。
 くるりと方向転換し、ベッドに片膝をのせた所で、私は慌てて声をかけた。

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