惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「待って!!ルーカスもお腹空いてるでしょ!?ほら、先に食事にしましょ!?私じゃお腹は膨れないでしょ!?」

「問題ない。お腹は満たされなくても、俺の胸は満たされる」

 上手い返しをしたと思ったのか、ルーカスはフッと鼻で笑う。
 ・・・が、こちらは笑えない。

「待ってルーカス、お願いだからちょっと待って!!」

「待てない・・・俺は待つのが苦手なんだ」

「うん、知ってる。知ってるけどぉぉぉ!!」

「エリーゼ、愛してる・・・早く、俺達の子供に会いたい・・・」

 そう言うと、私の体をベッドにゆっくり降ろし、私の手にルーカスの指が絡められた。

 あ・・・そうか・・・。ルーカスもなんだ・・・。

 ルーカスはせっかちだ。
 何かも待ちきれず行動してしまう彼は、我が子と会う事も待てないほどに、待ち焦がれているのだ。
 だからこんなに何回も何回も・・・
 いや、これはさすがにやりすぎじゃない・・・?
 回数って意味あったっけ?

 私の顔に、ルーカスの顔がゆっくりと降りてくる。

 ・・・私達の子供と会えるのも割と早いかもしれない。

 コンッ、コンッ・・・

 その時、扉を叩く音にルーカスの動きが止まった。

「旦那様・・・例の物が準備出来ました」

 扉の外から聞こえてきたのは、この屋敷に使える執事の声だった。

「ああ・・・分かった。エリーゼ、ちょっと待っててくれ」

 ルーカスは体を起こし、再び扉の方へと向かった。
 扉を開けて外へ出たかと思うと、直ぐにどデカい台車の様な物を押しながら入ってきた。その上にあるのは・・・水桶?
 ・・・何故か水桶が何個も置かれている。しかも、水がたっぷり入っているので、台車の動きに合わせて水が跳ね、少しずつ零れている。

 ・・・え、何?何が始まるの・・・?

 ルーカスは台車をベッドのすぐ近くまで持ってくると、私の前で両手を広げた。

「さあ、エリーゼ・・・思う存分にやってくれ。愛の証明をしよう」

「・・・え?」

 ・・・なになに?どゆこと?
 これで一体何をすれば良いの・・・?
 
 私は目の前の状況が飲み込めず、ただ戸惑い狼狽えるしかない。

「どうした?エリーゼ・・・」

 いや・・・どうした?・・・って、こっちが聞きたい。
 ルーカス、一体どうしたの?

 すると、ルーカスは何かに気付いたかの様に八ッとして口を開いた。

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