惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「よし、ならばさっそく向かおう!」

「きゃあっ!!」

 私は急にルーカスに抱き抱えら れ、とっさにその首元にしがみついた。
 ルーカスはそのまま私を抱き抱えた状態で、コールの所へ歩み、括り付けていた手綱を解くとその背中へと跨った。

「あ・・・ルーカス、私の重さの分もコールに負担がかかると思うから、ゆっくり休憩しながら行くわよ」

「ああ、それなら大丈夫だ。エリーゼのことは俺が抱き抱えているから・・・体力には自信がある」

 確かに、私を抱え上げるルーカスの腕は逞しく力強く抱きしめられると圧迫感はあるけれど、不快な気はしない。むしろもっと強く・・・じゃなくて・・・

「いや・・・ルーカスの心配じゃなくてコールの心配をしているのよ。ルーカスが私を抱き抱えてても2人分の重さがコールにのしかかる事に変わりないんだから」

 しかし、なぜかルーカスは少し寂しそうな顔を見せた。

「そうか・・・エリーゼに心配してもらえるとは・・・コールが羨ましいな」

「・・・私はあなたの頭が1番心配だわ・・・」

 昨日の惚れ薬を飲んでから彼の言動が色々とおかしい・・・
 いや、以前からちょっとおかしい所はあったけど、明らかに暴走しているのは確かだと思う。
 周りの人達や仕事に何か影響を及ぼしていなければいいけど・・・

 私は首元のネックレスに目を落とした。つい流されて受け取ってしまったけど・・・恐らく相当高価な物なのではないだろうか・・・?

 それだけではない。
 あの大樹や大きな石にしてもそうだ・・・それを一晩で運び出すのは1人では到底無理だ。
 果たして一体どれだけの時間と労力とお金を消費したのだろうか・・・。
 すでにもう取り返しがつかない程、外堀を埋められているのでは・・・?

 そんな恐ろしい事が頭を巡りながら、私達は首都へ向けて出発した。
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