惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
7:ドレスを買ってあげたい(後編)
「ど・・・どうかな・・・?」

 試着室から出てきた私を見た瞬間、ルーカスは口を開けたまま硬直し、惚けた様子でしばらく私の姿を見ていた。
 ルーカスの海の様な瞳の色を意識して選んだ、青空が広がった様なドレスを着て、控えめにお化粧もしてもらった。
 あまりにも見つめてくるので、私はその目を合わせる事が出来ないまま、ルーカスの言葉を待った。

 その硬直状態がしばらく続いた後、ルーカスは満足気な笑みを浮かべると、その口が動きだした。

「ああ・・・エリーゼ・・・すごく綺麗だ・・・」

 今のルーカスなら、きっとそういう言葉をくれるだろうと期待はしていたけど、いざ言われてみるとやっぱり胸が熱くなり、嬉しかった・・・。
 そしてルーカスは両手を広げて、私の方へゆっくりと近寄ってくる。

 ・・・おっと・・・?何をする気だコイツは・・・?
 今までの前科を考えると、警戒せざるを得ない。

「ルーカス様!!?」

 私がルーカスに対して身構えていると、突如として彼の名を呼ぶ甲高い声が店内に響き渡った。

 その声がした方へ目を向けると、まるで薔薇を連想させる様な真紅のドレスに、主張の激しい宝石のアクセサリーをいくつも身に付けた若い令嬢が立っていた。
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