惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「ルーカス!!待って!!」

 エリーゼの声に俺はピタリとその動きを止めた。
 そちらに目をやると、戸惑いながらも顔を赤らめたエリーゼが・・・。

「わ、私も・・・「あーん」してほしいな・・・」

 ・・・・・・!!!
 俺は素早く席に座り、勢い良くフォークを手に取ると、お皿の上の肉を次々と刺して一口サイズにした物をエリーゼの口元にソッと近付けた。
 緊張して手が震えている・・・。

「エリーゼ・・・あーん・・・だ」

 俺の声に応える様に、エリーゼも少し恥ずかしそうに口を開け、俺の差し出しているフォークの先を口に含んだかと思うと、その口が肉を掴む様に動き、ゆっくりと離れた。
 その行為が何か神秘的な儀式の様に思えて、その光景に感動し、しばらくエリーゼの食べる姿をただ眺めていた。

「うん・・・美味しい!!」

 ああ・・・眩しい・・・。
 幸せそうに笑顔を弾けさせるエリーゼの笑顔が眩しい・・・。
 このまま光の中に消えてしまうんじゃないか・・・?
 目が(くら)むような眩しさに俺の手からフォークがポロリと落ち、その手で顔を覆うと、俺は説明し難い何かに耐えるように戦慄した。
 
「・・・え・・・なにこれ・・・?」
 
 隣でダンの口から何か雑音がした気がしたが、気のせいだろう。
 俺は火照った顔を冷ますためにグラスの水を一気に飲んだ。

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