惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「・・・ルーカス・・・この流れで非常に言いづらいんだが・・・ウィンデール公爵が屋敷で待っている。早く戻ってきてくれ」

 なぜかすっかり意気消沈しているダンが、切実な表情をしながら俺に話かけてきた。
 そのくだらない内容に、忌々しさで顔が歪みそうになる。

「なんだ。あのおっさんはまだいるのか。さっさと帰ればいいものを・・・公爵の相手ぐらいお前が適当にすればいいだろ。」

「僕なんかが適当に相手できるような相手じゃないだろ!あとあの人、ルーカスの前と僕の前では全然態度が違うしさあ・・・朝からずっとルーカスを出せって喚いてて迷惑なんだよな」

 情けない事を述べる目の前の無能な男にはがっかりさせられる・・・。

「言い訳はいい、食事ぐらいゆっくりさせろ」

「お前・・・いつも僕が食事してる時に散々急かしてくるだろうが!!」

 ああ・・・本当にやかましい・・・。
 そんな大声出したらエリーゼがびっくりするだろう・・・。
 俺はエリーゼが心配になり、その様子を伺うと、エリーゼはすでに食べ終えており、「いつでも大丈夫」というように俺に勇ましく笑いかけた。

 それを見届け、俺も皿の上の物を全て食べ終えると、フォークとナイフを皿の上に置いた。

「あ、食べたね。二人とも食べ終わったね!じゃあ今すぐ行こうか!!」

「お待たせ致しました。」

 店員が食べ終えたお皿を下げ、代わりに俺とエリーゼの前にはコーヒーが入ったティーカップが並べられた。

「・・・なに食後のコーヒーまで頼んでるんだよおぉぉぉぉ!!」

 ダンは叫びながらガクッと地に手と膝を付き、わなわなと震えている。

「せわしいやつだな」

「はあああ!!?お前だけには言われたくないわあああああああ!!!!」

 そう叫ぶダンを無視して俺はエリーゼと食後のコーヒーを楽しむ事にした。
 エリーゼは申し訳なさそうな視線をダンに向け、なるべく早く飲もうと焦っているようだ。

 その様子を見て、俺はやはり先ほどダンの舌を切り取ってしまえば良かったと思いながら、ハアッとため息をつき、コーヒーをゆっくり飲み進めていった。
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