惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「ルーカスって、私のどこが好きなの・・・?」

 その声に目を開けると、先程まで窓を眺めていたはずのエリーゼは、俺の心を探るように真剣な目で見つめていた。

 どこが好きか・・・?正直、全部なのだが・・・。
 逆に好きにならない理由があれば教えて欲しい。

 彼女を好きになったきっかけは、単純に一目惚れだった。
 だが、一目惚れと答えると、あたかも容姿だけで好きになったとも捉えられてしまう。
 
 確かに、彼女の容姿はいつ見ても魅力的だ。
 フワフワと波打つ長い髪は、そのリボンを解いて乱れるほど撫で回したいし、エメラルドの様な輝きを放つ、そのつぶらな瞳には常に俺だけを写し出して欲しい。
 絹の様に滑らかな頬に触れ、その艶やかに湿った唇に口付けをして思うままに味わいたい。

 ・・・なんて言ったら引かれるだろう・・・。

 もちろん、彼女の魅力はその容姿だけじゃない。
 壊滅的に手先が不器用でほっとけない所も・・・。
 勉強を教えてあげると言いながら突拍子も無い、的外れで不可解な答えを自信満々で教えてきたり・・・。
 掃除すると言いながらホコリを撒き散らして行く所も・・・。
 それらの事にほとんど自覚が無く、少し抜けてる天然な所も・・・ほんと可愛い。

 ・・・いやいや・・・そんな事も言えるわけがない・・・。

 俺がエリーゼの溢れる魅力をどう伝えるか悩み考えている間に、エリーゼは少し悲しそうに目を伏せてしまっていた。

 しまった・・・返答に時間を掛けすぎた・・・。
 エリーゼを早く安心させてあげなければ・・・。

「・・・・・・エリーゼの全てが魅力的だ」

「そう・・・」

 悩みすぎた結果の答えがこの一言とは我ながら呆れてしまう・・・。
 エリーゼも俺の答えにあまり納得しなかった様で、どこか沈んだ様子で再び窓の外へ目を向けた。

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