惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
私は体内の熱を逃がすようにゆっくり息を吐き、落ち着きを取り戻すとルーカスに目線を合わせ、宥めるように語りかけた。
「ルーカス・・・惚れ薬による効果は一時的なはずよ?もしも今の気持ちのまま結婚したとして・・・惚れ薬の効果が消えた時に、後悔するのはあなたなのよ?」
今は惚れ薬の影響で私の事を好きだとしても、もし薬の効果が切れて、好きという感情が無くなってしまったら・・・その後の事は今は考えたくない。
結婚を取り消すこと・・・つまり、離婚をするという事も可能ではあるけど・・・。
結婚式とは、教会の聖堂で神に対して、2人が生涯を共にするという誓いを立てる事である。そうすることで、初めて成婚が認められ、同じ性を名乗ることが出来る。
しかし、もしも離婚をするとなると、それなりに代償を支払う必要があるのだ。
1度神に対し誓いを立てたのならば、2度目は無い。つまり、離婚は出来るが、再び結婚する事は出来ない。
それでも、離婚をした人が好きな人と一緒になる事はある。が、法的には認められていないため、同じ性を名乗る事は出来ない。
つまり、正式に結婚出来るのは1度きり。
人生における重大な決断であり、決して失敗してはいけない事なわけだ。
決して、惚れ薬による一時的な感情で行うものでは無い。
その事を理解してほしくて、ルーカスを見る私の目は自然と鋭くなっていく。
ルーカスは口元に手を当て、何か考えるような素振りを見せた後、私の顔をじっと見た。
「・・・ならば、エリーゼは後悔しないのか?」
「へ・・・?」
予想外の問いかけに、睨むようにルーカスを見つめていた私の瞳は丸くなった。