惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 俺を殺すことが難しいと察した後は、自分の娘の婚約者にならないかという馬鹿げた提案をしてきた。
 この男の脳みそはどういう構造をしているのだろうか・・・。

「それより何時間ここで待ってたんですか?こんな所に長居してて良いのですか?」

「何が言いたい・・・?」

 公爵は怪訝そうな表情で俺を睨んでいる。
 その働いていない脳みそのためにも、仕方なく俺は教えてやることにした。

「実はここに来ているもう1人の客は、皇室直属騎士団の第2部隊隊長なのです・・・。確かに彼は私の友人ですが、今日会う約束はしていませんでしたし、本来ならまだ勤務中のはずです。彼は何故、連絡も無しに急にここへ来たのでしょう?」

 ジルがここに居たことは予想外だったが、なぜここに居たかについては想像が着いた。
 恐らくコイツにくっついていたんだろうな。

「・・・・・・・・・まさか・・・私を尾行して・・・?」

「さあ?そんなことより、早く帰った方が良いのでは?今頃公爵邸の方は大変な事になってるのでは?」

 おそらく皇室の騎士達が、不正の証拠を探して屋敷を捜索しているだろうな。

「まさか・・・!!?」

 公爵は真っ赤な顔が血の気が引いたように真っ青に変わり、立ち上がると転びそうなほど慌てた様子で部屋の出口へと向かった。

「貴様!!!覚えてろよ!!?」

 何を思ってそんな言葉を吐いたかは知らないが、奴が利用していた暗殺ギルドも近々解体されるだろう。

 エリーゼの驚異となるものはすべて取り除く・・・跡形も無くな・・・。
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