惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 20年前・・・私達が8歳の頃、ルーカスは私が住む村へ母親と一緒にやってきた。
 村に住む子供は少なく、年齢もバラバラだった。
 同い年の男の子の友達が出来るのが嬉しくて、私は噂を聞きつけると、すぐ彼を見に行った。

 初めてルーカスの姿を見た時、整った容姿、ピシッとした張りのあるシャツに首元にはオシャレなスカーフ、幼いながらも品格のある立ち姿に目を奪われた。
 村に住むやんちゃな男の子達しか見たことが無かった私は、その気品溢れる姿に衝撃を受けた。

 当時の私は、平民の娘と王子様が結ばれる絵本を夢中になって読んでいた。
 だから私はその日、まるで何処かの国の王子様の様なルーカスに一目惚れしてしまった。

 私の村に王子様がやって来たと、胸を躍らせながら・・・。


 当時のルーカスは、なかなか村の子供達と馴染もうとせず、一人で家に引きこもる事が多かった。
 そんな彼を訪ねては、門前払いに終わっていた私は懲りずに何度も通い続けた。

 ある日、ルーカスの母親が仕事に出ている時、なんとかしてルーカスに会えないかと、私は木によじ登って家の2階にある彼の部屋の窓から侵入した。
 驚いた彼は暫く唖然としていたが、突然私に木登りを教えてほしいと頼んできた。

 その日から、私はルーカスに木登りのコツを教えてあげながら、苦手な勉強を教えてもらう関係になった。
 そのおかげで、間違いだらけだった私の答案用紙にはマルがたくさん並ぶようになり、私を馬鹿にしていた子達も、大人しくなっていった。

 そして少しずつ、彼は私に心を開いていった。
 よく笑うようになり、言葉数も多くなり、私が一緒なら、他の子供達とも遊ぶようになった。
 特に同い年のユーリと私とルーカスはよく3人で遊びに出かけるようになった。

 今思えば、幼い頃のルーカスはせっかちな性格ではなく、どちらかと言うとのんびりしていたと思う。
 集団行動する時、いつもルーカスは皆から少し離れていた。
 そんなルーカスが気になり、私はルーカスの傍にいつも居た。
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