愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜




 ハンガーにかかっていたコートをユキに押しつけるが、ユキは一向にそれを受け取らない。


 どうしたのかと背の高いユキの顔を見上げると、真っ直ぐな瞳をこちらに向け、困ったような笑みを浮かべていた。部屋の照明がユキの髪に反射して眩しい。



「僕、家出中なんだ。それに、心配なんてされてないから」
「高校生が何言って……」
「親も、僕の存在を持て余してる」



 その言葉に、思わず動きが止まる。持て余してる……?
 浮かべた笑みの裏側に見え隠れする、どこか寂しげな表情。
 この子にも、事情があるの……?



「言ったでしょ?野良猫みたいなものだって。毎日寝床を変えて、僕の居場所なんてあってないようなもの」
「……」
「でも、春香はいい人だね」



 ユキは私が押し付けたモッズコートを受け取ると、子供扱いするように私の髪の毛を撫でた。



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