愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜
コツ、コツ。ヒールでアスファルトを踏み締め駅構内へ。
大きなキャリーケースを引く若い男の子や、会話に花を咲かせる女子高生、疲れ切ったサラリーマンを追い抜き、改札の前に置かれている自動販売機で温かいカフェオレを買う。
「……はぁ」
溜息を吐き出すと、それは白い煙となって空気に溶けていく。
あの出来事から、ユキは三日間帰って来ていない。あれだけの事があったから当たり前かもしれない。
本来なら連絡を入れたいところだけど、スマホの電話帳でユキの番号を開いては閉じてを繰り返して終わってしまう。
あの子は今どこにいるんだろう。
ユキのいない部屋に帰ると、寒くてたまらない。きっとそれは身体ではなく心の問題だ。
ユキの傷付いた表情を思い出す度、心の奥がジクジクと傷む。
「帰ろう」