愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜
秀人のことが好きだった。この人とずっと一緒に居たい、結婚したいと思っていた。
振られてしまった時は、もうこんな悲しみを味わいたくなくて、この先一人で生きていくことを決意した。
そこで、あの銀髪が頭の隅を過ぎる。
膝に置いていた手に、秀人の手が重ねられた。過去に何度も繋いだ、温かい手。
「同居している彼が、春香を変えたことは分かっている」
「……手、離して」
「都合が良いことも、全部全部……」
「秀人」
「だけど、やっぱり俺は……春香とやり直したい。一緒に生きていきたい」
────一緒に生きていきたい、か。
ここで秀人とやり直せたら、きっと私は世間でいう正しい大人に、女性になれるのだろう。
きっと、人並みに幸せになって、結婚して子供を作るのかもしれない。
必死に守ってきた、自分の正しいと思う道を外れずに済むのかもしれない。