愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜




「ハッ……はぁっ」



 なんてことをしてしまったんだろう。
 分かっていたはずなのに。私だけはあの子を傷付けてはいけないと、分かっていたはずなのに。


 あの子は私に全てをくれた。
 本当の私を見てくれた、一人で生きていくと強がっていた私に、全てをくれたのに。



「……ユキ」



 窓の外に雪がパラついているのが見えた。今年の冬は雪が多い。
 ユキがいるかもしれない、ふと思い立ちこの電車に乗り込んだが、その可能性はきっとゼロに近い。


 だって、こんなに寒い日にあんなところにいるわけがない。
 だけど、どうしても確かめずにはいられなかった。



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