愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜
大人になるということ。
(ユキside)
僕は、こんな人を知らない。
何年もこの場所で苦しみ続けた。
無人駅からしばらく歩いたところにある、住宅街の一角に建っている住み慣れた一軒家。
無駄に広々したリビングダイニングの真ん中に置かれているテーブルを挟み、目の前に座る、僕と唯一血の繋がった人は深く俯いていた。
僕はその様子を見て、ずっと心の奥に秘めていたドス黒くてただ苦しい感情がスッと消えていくのを感じた。
その人は、僕の想いの丈を聞き終えると、膝の上でギュッと握りしめられた拳の上にボタボタと涙を零した。