愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜
今日だけじゃなく、ここ最近ずっと運が悪い気がする。もしかして誰かから呪われてる?
いや、呪われるほど悪いことをした覚えもないな……。
私が考え込んでいると、さくらが財布から一万円を取り出し、こちらに差し出す。
「ほら、もし帰りに何かあってお金が必要になったら大変でしょ?貸しておくから」
「大丈夫よ。お昼代も貸してもらったし」
「……本当に平気?」
「平気よ」
「もう、春香はもう少し人を頼ることを覚えた方がいいよ」
コートを着込みながら、さくらの話を軽く聞き流した私は、数時間後に起こる悲劇をまだ知らなかった。
「じゃあ、お疲れ様~」
「おつかれ」
私が働いている洋菓子メーカーの事務所は、県の中でも主要地域にあり、それなりに栄えた場所にある。
だけど私が実際に住んでいる地域はこの場所とはかけ離れたような田舎で、終電がとても早い。
さくらと事務所の入っているビルの前で別れ、駅まで走ってなんとか終電に乗り込み、電車に揺られて40分。
いつもはスマホを弄っていれば、あっという間に過ぎる時間。
だけど、残業で疲れきった私の身体は、心地よい電車の揺れに誘われ眠りに落ちていった。
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