愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜



 仕事を終え、ビルから外に出るとやけに冷える。
 見上げると、空を分厚い雲が覆っていた。今日の天気も深夜に掛けての積雪。
 予報を見て、私はきちんと厚手のコートにマフラーの完全防備で出勤したから、寒さ対策は万全だ。


 ……そういえば、ユキと出会った日もこんな天気だったな。



「……早く帰ろ」



 なんで、もう会えない人間のことをこんなにも考えてしまうんだろう。
 駅までの大通りを歩きながら考える。
 私よりもかなり年下の高校生で、毎日違う寝床を転々としている、自分とは住む世界の違う人間。



「……さむい」



 なのに、私を抱きしめた優しい腕とか、思ったことをすぐ言葉にする純粋なところとか。人の体温がないと眠れないという、幼いところとか。
 ……あの、まっすぐこちらを見つめるエメラルドグリーンの瞳を忘れられない。


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