愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜



 『幸せに成る』それがどんなに難しいことだか、私が一番分かっていた。諦めていた。 
 だけど、心の奥底では、どうしても諦めきれてはいなかった。


 あの日、雪の降る駅前でユキに出会い、自分は自分でいいんだと教えられた。
 この子の孤独を知って、そこから掬い上げてあげたいと思った。


 この子を好きになって、誰かと寄り添って生きるのを諦めたくないと初めて思えた。


 ほろり、目尻から雫が溢れる。



「────ゆきなりっ」



 彼の名前を呼び、彼の体を掻き抱く。
 ユキもそれに応えるように強く私を抱き返す。それだけで心が満たされていく。この子は私に幸せを教えてくれた。



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