愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜
聞き慣れた声のはずのそれは、恐ろしいほどの冷たさを含んでいた。
彼女を支えたのは、同期の彼だった。
「ねぇ、何で突き飛ばしたの? 聞いてる?」
「ひっ……!す、すいませんでしたっ……!!」
彼が高い身長からサラリーマンを見下ろし冷たい目で睨みつけると、サラリーマンは顔を真っ青にして逃げてしまった。
その背中を見えなくなるまで睨みつけていた彼は、女の人にゆっくりと視線を移す。
そして、愛おしいものを見つめる甘い視線を女の人に送った。
「春香、流石に今のは良くないよ危ない」
「助かった……。ありがとうユキ」
「こういう正義感強いところも好きなんだけど、今後僕の居ないところではやめて」
「……分かった。ごめんなさい。……って、怪我してる人がいるの! ユキ、私の荷物持って!」
「うん。分かった…………あ」
彼とばちりと視線が合う。
彼は驚いたように目を丸くすると、ニマリと口角を上げた。