消えた未来
 なんて、蘭子が本当はどう思っているのか知らないが、俺がとやかく言うことでもないことはわかっているから、わざわざ触れるようなことはしない。

 ここは話を戻すのが最善だろう。

「病気だってわかってからは、学校なんてどうでもいいって思ってた。いや、今でも思ってるかも。でも、織部さんに思い出作りがしたいって言われて、楽しそうだって思ったんだ。やっぱり、一人はつまんないんだよな」

 蘭子は困った顔をしている。

 そこまで言葉に困らなくてもいいのにと思いながら、苦笑する。

「過去の話してからいろいろ考えたんだけど、俺、結局決めつけて逃げてただけなんだって気付いた。学校の奴らは、俺のことをかわいそうな奴って目で見てくるから、関わりたくない。どうせ楽しくない。そんな感じで」

 だから、不良だとかいう噂が独り歩きして、誰も近寄ってこなくなったのが、都合がよかった。

 一人でいても平気だったし、学校はつまらなくて当然だと思っていた。

「でも、一緒に楽しいことがしたいって言われて、もっといろんな人と関わっておけばよかったって思った」

 蘭子はずっと黙っている。

 少しずつ自分語りが恥ずかしくなってきて、ちょっとした沈黙に耐えられそうになくて、俺は一人で話し続ける。
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