消えた未来
 そんなふうに葛藤し、結局行けないでいると、昼休みになった。

「久我が来なくて残念だね」

 いつものように、星那が弁当を持ってきた。

 今日は久我君が休みだとわかっているから、久我君の席に座る。

 その表情は拗ねているようだ。

「星那、なにかあった?」
「別に」

 そう言いながら弁当箱を開けるけど、どう見てもそれで済ませられない態度をしている。

「真央が久我のことしか考えてないからって、拗ねてないから」

 いや、誰がどう見ても不貞腐れているだろう。

 そう思っても、言わないほうが得策だと思った。

「それで、いい加減思いついたの?」

 私が一週間悩んでいたことを知っているから、呆れたように言われた。

「お菓子作りをしてみたいなと」

 星那は興味なさげに相槌を打ち、卵焼きを食べる。

「ダメかな?」
「真央がそうしたいって思ったなら、いいんじゃない? 私が思ってたのとは少し違うけど」

 そう言われると、不安になる。

「星那が思ってたのって?」

 星那が食べているところを見ているとお腹が空いてきて、私もお昼を食べ始める。

「映画を見に行くとか、遊園地に行くとか、そういう感じ」

 たしかに、そのほうが楽しいと思う。

 遊んでいるという感じもして、いい。
< 112 / 165 >

この作品をシェア

pagetop