消えた未来
「食事中ごめんなさい。食べ終わったらでいいから、保健室に来てもらえる?」
「わ、かりました」

 どうしてそんなことを言われるのかわかっていないから、明らかにわかっていないだろうと思われるような言い方になってしまった。

 恐らく先生にもそれは伝わっただろうに、先生は「よろしく」と言って、去っていった。

「なんだったんだろう」

 星那の言葉に同意するように首を傾げ、お弁当を食べ進めた。

「失礼します」

 そう声に出しながらドアを開けると、高瀬先生しかいなかった。

 この状況が怖くて、意味もなく身構えてしまう。

「あの、どうして呼び出しを……」
「俺が呼んでもらったんだ」

 ベッドの方から、今日は聞こえるはずのない人物の声がした。

「久我君?」

 久我君は、カーテンを開けながら立ち上がった。

 久我君の姿を見て、さっきまでの妙な緊張感は一気に消えた。

 そして、今日はずっと久我君がいないことを残念に思っていたから、今目の前にいることが嬉しくて、私は舞い上がってしまった。

「今日は休みって聞いてたけど、来てたんだね。ちょうどよかった。この前話したやりたいことが見つかったんだ」
「あのさ」

 私のテンションとは真逆に、久我君は落ち着いていた。
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