消えた未来
「私がしたことは、迷惑、だった……?」

 確かめるのは怖かった。

 もし、肯定されたら。

 想像するだけで背筋が凍る。

 そして、聞いておきながら、なんとなく頷かれるような気がした。

 今、私が勝手にしたことだって言ったのだから、迷惑に思われているに決まっている。

『久我にとっては迷惑でしかないだろうけど』

 星那が、そう忠告してくれていたのを、思い出した。

 やっぱり、相手の気持ちも考えずに自分勝手に行動するのは、よくなかった。

 久我君が答えるまでにいろいろ考えて、ますます答えを聞くのが怖くなってしまい、私は俯いて拳を強く握る。

「……感謝はしてるよ」

 その言葉だけで、ひどく心は救われた。

 嬉しさの勢いで顔を上げたのはいいけど、久我君の表情は変わっていないかった。

 それを見ると、今の言葉は嘘だったのではないかと思った。

「君のおかげで、少し先のことを望んでみようと思えたから」

 さっきの絶望は、悪い夢だったみたいだ。

 久我君は、嬉しい言葉を並べてくれる。

 でも、それはほんの一瞬のことだった。

「だけど、俺の未来に君はいらない」

 話を始めてからどことなく目を合わせてくれなかったのに、このときだけ、久我君はまっすぐと私の目を見て言った。

 そして、それを聞いた途端、私は保健室を飛び出した。
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