消えた未来
 幻聴かと思ったけど、顔を上げると確かに星那が目の前にいる。

 多分、星那よりも私のほうが驚いた顔をしているだろう。

「なんで、星那がここに……」

 泣いていたこともあり、言葉が途切れる。

「あの先生が真央を呼び出した内容が気になって保健室に行ってみたら、ちょうど真央が飛び出してきて。でも声をかけられる雰囲気じゃなかったし、真央はさっさとどこかに行くから、とりあえず追いかけてきた」

 星那は状況を説明しながら、私の隣に腰を下ろした。

 そして、そっと私の背中に触れた。

 その手はとても優しくて、私はまたさらに泣きそうになる。

「なにか嫌なことでも言われた? あの先生、真央に対して敵意を向けてたし」

 そのことに関しては、自分でも薄々感じていた。

 きっと、私が久我君の病気のことを好奇心で知ろうとしていたことに対して、良く思っていなかったことが原因だと思う。

 だから、正直、よく思われていなくて当然だと思っているから、敵意を向けられたことはあまり気にしていない。

 あと、星那の予想は外れているから、首を横に振って否定する。

「じゃあ、なにがあったの?」

 星那に説明しなければならないときが来るのはわかっていた。

 だけど、こんなにすぐだとは思っていなかった。

 自分でも処理しきれていないことを、どう説明すればいいのかわからない。
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