消えた未来
 そうして私が戸惑っていることも星那は察してくれて、急かすようなことはしてこなかった。

 混乱した頭の中を、ゆっくりと整理していく。

「……久我君が」

 落ち着いて話を始めたはずなのに、彼の名前を口にしただけで、再び感情が不安定になった。

 この先を、自分の口から言う勇気がなかった。

「もしかして、久我の体調、悪くなってたの?」

 どうしてそう思ったのかなんて、聞かなくてもわかった。

 でもそうではないから、また首を振る。

「私がしたこと、迷惑だったんだって」

 もう、笑うしかなかった。

 星那の顔を見る限り、見ていて痛々しい笑顔だったのだろう。

 そんな表情をされると、自分でもむなしく思えてきて、私は顔を背けた。

 言葉をかけられるのも怖くて、すべてを拒絶するように、膝を抱えて丸まった。

 すると、星那がそっと私の頭に触れた。

 少しだけ驚いて、星那を見る。

 同情の色はまったく感じられず、怒りの雰囲気しかない。

「それ、あの先生が真央に言ったの」

 声色は低くなり、静かに怒っている。

 そのおかげか、私はなぜか冷静になれた。

「ううん。久我君が来てて、本人に直接」

 さっきまで言いたくないと思っていたことが、自然と出てきた。
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