消えた未来
 だから、彼女の話に飽きている人も数人いる。

 今でこそ四人でいるけど、初めは三人でいて、結城さんはつい先日話しかけてくるようになったのだ。

「またイケメンの彼氏?」

 さっき私に質問しようとしていた佐倉さんが、ため息混じりに言った。

 これは誰だって話すのを躊躇ってしまう対応だ。

「うん。昨日はね、ルナにサプライズでプレゼントをくれたの。大人っぽい香水。ルナには似合わないって言ったら、よく似合ってるって。いつもと違う雰囲気も素敵だって言ってくれたの」

 それでも話してしまうのが、結城さん。

 それにしても、饒舌だ。

 これだけ幸せそうに話されると、こっちまで幸せになる。

「よかったね」

 ……のは、私だけだったみたいだ。

 佐倉さんと大原さんは聞きたくないようで、席を立った。

「あれ? お手洗いかな? そうだ、真央ちゃん、まだあるんだけど聞いてくれる?」

 少し反応が遅れた私は、見事に結城さんに捕まった。

「えっと」

 頷けば済んだところを、私は戸惑いを見せてしまった。

 結城さんは、切なそうに笑う。

 その反応に、罪悪感が込み上げてくる。

「ごめんね、迷惑だったかな」
「そんなことはない、です。幸せそうで、羨ましい」
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