消えた未来
 それは本当のことだった。

 私には得られなかった、幸せな結末。

 純粋に羨ましくて仕方なかった。

「え? あ、違う、今の彼氏の話じゃなくて、話を遮ったこと」

 結城さんの言葉を聞いて、私は一瞬思考停止状態になってしまった。

「織部さん、話したくなさそうだったから、つい邪魔しちゃった。話したかったなら、ごめんね?」

 結城さんの予想通りだから、謝られたことに対して、首を振る。

 さっきのあれは、私を守ってくれていたのか。

「意外って顔してる」

 このタイミングでその顔をするのは失礼だと思って、顔を隠す。

 でも、そう思ったのは確かだ。

 結城さんは、ただ誰かに自分の恋愛話をするのが好きな人なのだとばかり思っていた。

「なんでみんな、普通に他人の恋愛事情を聞くのか、ずっと不思議なんだよね。他人が土足で踏み荒らしていい話題じゃないのに。触れてほしくない人だって、当然いるってことに気付かないのかな」

 その言い方には、どこか棘があるように感じた。

 ただの興味本位で恋バナを始めることがそんなに嫌だとは思わなかった。

「結城さんは恋バナが好きなんだとばかり」
「話すのは好きだよ。幸せで楽しいことを言ってたら、気分上がるし。でも、話したくない人に無理やり聞いたりするのはイヤ」
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