消えた未来
 ここまではっきりと言われると、断りたくない。

「じゃあ、真央って呼んでほしいな」

 同じように返すと、結城さん、月渚ちゃんは満面の笑みで私の両手を握った。

 何度も上下に動かして、本当に喜んでいるのが伝わってくる。

「でも、よかった。このままだと、友達ができないかと思ってたから」
「どうして?」

 月渚ちゃんのコミュ力だと、誰とでも仲良くなれると思っていたから、その発言が不思議だった。

「ルナの話を楽しそうに聞いてくれない人とは仲良くできないもん。まあ、ルナが話しすぎるのがダメなんだって、わかってるんだけどね。だけど、みんなに好かれるために、好きなことを我慢するのは嫌だなって思ってて」

 月渚ちゃんは少し切なそうに話を進める。

 若干ナイーブな話題に、どんな言葉をかければいいのか、迷ってしまう。

「高校までは、亜子ちゃん……あ、幼なじみがね、いてくれたんだけど、ここには進学してなくて。だから、実はずっと不安だったんだよね」

 同じだと思った。

 星那は進学せずに就職していて。

 二年くらい星那に甘えていたのと、さらに約二年、交友関係を広げるよりも優先したいことがあって。

 友達の作り方なんてすっかり忘れてしまっていたから、私だって不安でいっぱいだった。
< 128 / 165 >

この作品をシェア

pagetop