消えた未来
 そして昼休みになると、蘭子は織部さんを呼びに行ってくれた。

「織部さん、お昼食べたら来るって」
「ありがとう、蘭子」

 学校に来ること以外の無理はしないと決めていたから、ベッドに横になって待つことにした。

 すると、誰にも見つからないようにと、蘭子はカーテンを閉め始めた。

「ねえ侑生。彼女に、なにを言うつもりなの?」

 カーテンを半分くらい閉めたとき、蘭子が聞いてきた。

「特に考えてないけど……織部さんを傷付けようと思ってる」

 俺が予想外のことを言ったから、二人は固まった。

「どうして」

 蘭子は驚きのあまり、怒っているような言い方をした。

「先生に言われて気付いたんだけど、多分俺、織部さんのことが好きだ。でも、俺の未来は短いから、結ばれるのはありえない」

 どんどん二人を困らせる発言をしていく。

 そのせいで、空気が重くなっていった。

「で、織部さんを傷付けて、嫌われてるって思えば、諦められるかなって」

 少しでも明るくなればいいと思って笑うけど、それは虚しくなるだけだった。

 そして、空気が変わらないまま、織部さんが来た。

 俺はゆっくりと立ち上がり、織部さんの前に姿を見せる。

 俺を見た織部さんは子犬のようで、抱き締めたい衝動に駆られた。
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