消えた未来
 そこまで言っておいて、大事なところは教えてくれなかった。

 でも、納得だった。

「まあ、ゼロから探せっていうのも酷だろうから、手始めに、店の手伝いでもしてみるか? いろんな人と話して、見つけてみたらどうだ?」

 叔父さんは名案だろうという顔をしている。

「……それ、叔父さんが楽したいだけじゃないの」

 やってみたいと思ったくせに、それを知られたくないとか思って、可愛くない言い方をしてしまった。

 きっと叔父さんは気付いていて、笑っていた。

 それから数日後、俺は注文された品を運ぶだけの手伝いを始めた。

 叔父さんが言った通り、いろんな人と関われて、楽しかった。

 あと、この世には俺が知らないことがたくさんあるんだって思った。

 少しずつ笑えるようになって、母さんとの関係も修復できたころ、俺はまた倒れた。

 ちゃんと体調には気を付けていたし、我慢もしていなかった。

 なのに倒れてしまって、楽しいことがあっても、病気が治ったわけじゃないんだって思った。

 そのときは入院も必要になって、簡単になにもない生活になることを知ってしまった。

 どんなに楽しいことを見つけても、あっという間に奪われてしまう。

 毎回こんな心が痛むなら、ずっと楽しくなくてもいいとさえ思った。
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