消えた未来
 それから、平日は部活に集中した。

 本当は店の手伝いもしたかったけど、母さんと叔父さんに止められた。

 俺自身でも、オーバーワークになると思ったから、理不尽だとは思わなかった。

 たまに休日に顔を出すと、常連さんたちが優しく声をかけてくれて、店の居心地のよさを改めて実感した。

 病気のことを考えると、いつか会えなくなるんだと思って、寂しくて、心が壊れそうになることもあった。

 だけど、叔父さんに言われたから、完全に考えないようにすることはなかった。

 いつか失うかもしれないから、一日、一日の出会いを大切にしよう。

 そのうち、そう思うようになった。

 そこで初めて、叔父さんが言っていた意味を理解した。

 中学の間は病気との付き合い方もわかってきて、倒れることは少なかった。

 義務教育が終わって、もう学校に興味がなかったから、高校は行かなくてもいいと思っていたのに、母さんは頷いてくれなかった。

「高校は行っておいたほうがいいから。お金は気にしないで」

 お金を気にして行かないと言ったわけじゃないし、なんで行ったほうがいいのかもわからなかった。

 でも、それは少し考えればわかった。

 母さんは、わざわざ『将来のために』という言葉を言わなかったんだ。
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