消えた未来
 そこまで気にされてしまうと、嫌でも俺の人生は短いんだと思わされてしまった。

 まあ、ここで母さんと言い争ってもお互いに傷付くだけだから、言いたかったことは、飲み込んだ。

「俺が高校に行く意味ってあると思う?」

 代わりと言ってはなんだが、いつだって正しい言葉をくれていた叔父さんに言ってみた。

「中学はほとんど小学校の持ち上がりだったけど、高校は違う。市外の人たちも通いに来る。つまり、出会ったことのない人たちと知り合える」

 また周りを知れということかと、つまらなそうな顔をしていたんだと思う。

「別に行きたくないなら、それでいい。高校は自由な場所だからな」

 自由な場所と言われると、行ってみたくなった。

 法に触れることさえしなければ自由だとは、なんていい場所なんだと思った。

 ちなみに、選ぶ基準は家から学校までの距離だった。

 一番近かった高校は進学校寄りだったけど、そういうのはどうでもよかった。

 無事そこに合格して、高校生になると、叔父さんは一ヶ月分のバイト代をくれた。

「俺、金が欲しくて手伝ったわけじゃないんだけど」

 返そうとしても、叔父さんは絶対に受け取ってくれなかった。

「それでやりたいことをやればいい。どこかに遊びに行ったり、好きなものを買ったり。美和には、金のことでわがままなんて言えなかっただろ」
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