消えた未来
「知り合いが死ぬかもしれないって知って、平気な人なんていないよね」

　私の隣で、誰にも聞こえないように言った。

　その通りだとは思ったけど、どう返せばいいのかわからなかった。

「それでも、私は受け入れるしかないんだろうなって思ったけど、真央は違うんでしょ？」

　これもまた、からかっているわけではなさそうだ。

　どちらかというと、諦めているような表情に見える。

「それはどういう感情？」
「心の底から複雑だし納得いかないけど、真央を応援する」

　聞けばそういう表情に見えてくる。

「ありがとう、星那」

　ここで私が言うべき言葉は、これだと思った。

　星那は変わらず複雑そうにしながら、微笑んだ。

　そして先に昇降口に向けて足を進めた。

「それで、これからどうするの？」

　どうするのと言われても、なにも答えが見つからなかったから、答えられない。

　いや、久我君ともっと一緒にいたいという思いははっきりしている。

　ただそのためになにをすればいいのかが、わからないのだ。

「告白とかしないの？」
「できないよ」

　その勇気がないし、したところで断られる未来しか想像できないから、告白は無理だ。

「だよね」

　星那は迷わず頷いた。

　どうやら私の返答は予想済みだったみたいだ。
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