酔いしれる情緒
「じゃあまた後でね~」っと、やっとうるさいやつは去っていった。
あの一瞬でドッと疲れた…
けど仕事中だから止めていた手を動かす。
(一緒に住むなんて…本当に大丈夫なのだろうか)
なんか怪しい勧誘とか、そんなんじゃなくて?
騙されてない?
…いや、騙されていると思う。
何か裏がある気がする。
だって、そんな上手い話ある?
家賃とか光熱費も要らないってことは、
あいつが全部払うって事だよね?
(……金持ちなの?)
ほんと、よくわからない。
(けど……)
"貯金が出来る"
その言葉にはつられてしまう。
いろんな本を今まで読んできたけど
いつかは海外に行ってみたいと思っていた。
小説に出てくる海外の場所。
そーゆーところを巡ってみたくて。
「あっ、」
モヤモヤとそんなことを考えていれば、手に持っていた本を1冊床へと落としてしまう。
……仕事に集中しろ私。
少しばかり溜め息をついてその本を拾う。
けれどその本の帯に書かれていた言葉が、モヤモヤとしていた私の背中を後押しする内容だった。
『大きな道へと繋がる第一歩。』
『迷わず挑むべし。』