酔いしれる情緒
「はぁ……分かったよ」
気に食わない。そんな顔を見せながらも、春は溜め息をついて玄関へと向かって行った。
シン…と静まり返るこの空間。
私はソファーの上で膝を抱えて座った。
突然の来客はタイミングが良かったというか、悪かったというか……
私にとってはその両方だ。
この想いを伝える良いキッカケだった思う。
けど、なぜか、伝えるのが怖い気持ちもあった。
言えばどうなる?
付き合う、のか?
芸能人と一般人が?
しかも、相手は人気俳優。
今売れっ子の人気俳優と
ただの一般人の交際。
(それって…どうなんだろう……)
その先へ進めば……
何かが変わってしまいそうで、怖い。
家に帰れば好きな人がいて
その人と一緒に温かいご飯を食べて
「おやすみ」と言い合って眠ること。
そんな普通の日常が幸せだと感じてる。
だからこそ、それ以上に求めるものなんて何もない。
この先もあなたの傍にいられるのなら
何も変わらず……ずっとこのままで。