酔いしれる情緒
「あー…疲れた」
「んー…」とその場で伸びをする春を背にしてリビングへと向かう。
ちょうど飲み物を作ろうとしていたところだったし、春の分も一緒に───…
「何も聞かないんだ?」
真後ろに春の気配。
ふわりと香る春の匂い。
首元に巻きついた春の腕。
そして─────耳に響き渡る春の声。
「…どうせ、教えてくれないんでしょ」
てゆーか、聞かなくても分かるし。
あの人は一ノ瀬櫂のマネージャーか何かでしょう?
待っている間に二人の関係を考えてみた結果、その結論に至った。
仕事の話をするくらいなのだから、きっとそうだと思う。
「んー、どうだろう?」
「………………」
その事に気づいているとも知らずにか、
春は曖昧な返事をする。
どうやら私の反応を見て楽しんでるみたいだ。
「知りたい?」
「別に」
「気になる?」
「全然」
テキパキとコーヒーを淹れる準備をしながらも即答を繰り返す私。
その間も春は後ろから私を抱きしめたままで。
「じゃあ、言い方を変えようか。」
するりと伸びてきた指先が
私の唇を愛撫して
「部屋の中で、何をしていたと思う?」
低い声が耳に響くと、背筋がゾクリと震えた。
「何って……仕事の、話」
「本当にそう思う?」
さっきまで平然としていたのに
今じゃ身体が熱くて仕方がない。
「男女二人だけの密室。
どんなことが起こるか、
凛はもう知ってるはずだよ」
首、背中、唇
春に触れられている所が、すごく熱い。