酔いしれる情緒





「着いたよ~ どう?覚えた?」

「………………」

「その顔は覚えられてない顔だね」





気づけば、もうどっかの駐車場だし。




地下?地下に入ったの?



本当に覚えてないんだってば。





「まっ、今度一緒に帰ろっか。入り口こっちだから。ほら、早く早く~」





腕を引っ張られて


なんかでっかいエレベーターに乗せられた。





「32階ね」

「32階……」

「そ、32階」





なんかめっちゃボタンあるんだけど……





(何階建てなのこのマンション…)





タワーマンションか何かなのか?







「俺の家はあそこね」

「…………………」





降りると、もはやホテルのどっかじゃないの?ってくらい綺麗な廊下。




普通マンションの廊下に花瓶なんてないよね?



しかも何個も。






「さあ入って入って!」




ガチャッ、と。


コイツの家らしき扉を開けられて

躊躇っていた私は後ろから軽く押された。




私が中に入ったのを確認すると、その扉は閉められてガチャリと鍵をかけられる。





「今日からここが凛の帰る場所だから」

「っ!」





耳元でそんな事を言ってきたから


ビックリしてギロリと睨む。





「えー、なんか嫌そうな顔してるね?大丈夫だって~本当に何もしないから。中案内してあげるね~」





もちろん信用はしてない。




してないけど、


ほぼ赤の他人のコイツの家に住む事を決意した私も相当バカだ。




お金に目が眩んだ、そんな感じ。




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