酔いしれる情緒
特別な1日です。
「えっ。この日、安藤さんも休み希望?」
「(も?) ダメですか?」
「いや、いいんだけどね」
そっかそっか、と呟きながらカレンダーに来週の休み希望を書き込む店主。
「この日慎二くんも休み希望だし、何かイベントでもあるの?」
言われてそのカレンダーを覗き込んで見れば、確かに同じ日の場所に慎二くんの名前が。
(……まさか)
なんて思ってしまったけど
偶然だ。きっとそうだ。
そう考え直しておこう。
「………まあ、何かあるみたいですね」
「そうなの?なんのイベント?」
「さあ。私もよく分かってません」
「ふーん。本屋に有益な情報だったら嬉しかったんだけど」
くるくるとペン回しをして見せる店主。
なんだか複雑な動きを見せるそれに視線は自然とそこに向いた。
有益な情報、ね。
少しだけあるかも。
「なら、この本をもう少し発注してもいいかと」
「ん?どれ?」
ピタリとペンが止められると
同時に私も興味がなくなって。
カバンの中に入れてあったそれを取り出し、店主の前で掲げて見せる。
それは帯に『一ノ瀬櫂』と『桜田紬』の文字が記載されているモノで。
「いよいよ公開されるみたいですから。」