酔いしれる情緒
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「ホットコーヒー1つ下さい」
仕事終わり、言われた通りにカフェで待つ私。
(今日はやけに疲れた…)
新たに入荷された本が普段より多くて、その商品の開梱と陳列にほぼ1日かかってしまった。
しかも重たい本ばかりだし……
(……早く帰って横になりたい)
目を閉じればすぐに眠れそうな、
そのくらい疲れているらしい。
さっき頼んだコーヒーを少し飲めば、
口の中に風味が広がる。
と。
「ここのコーヒー美味しいよね~」
「!!」
背後に人の気配。
それと共に聞こえたアイツの声。
振り向けば、そこにはやっぱりヤツがいて。
「ごめんね、ちょっと待ったでしょ?」
「………別に」
少しだけ息が上がってるから、
きっとここまで走ってきたんだと思う。
「ここ暑いね~」
「マフラー取れば?」
「それはダメ」
「なんで?」
「んー、なんとなく?」
意味がわからん。
暑いのはその大きめマフラー巻いてるからだろ。
「ソレ飲み終わったら行こっか」
そう言って、私の隣に腰を下ろした。
窓際のカウンター席に座っているから
外を見ればいいのに
(すごく視線感じるんだけど…)
ジーっと私を見るコイツ。
…飲みづらいわ。
「……なに」
「あぁ、気にしないで?
凛のこと見てるだけだから。」
いや、気になるから。
ちょーーー気になるから。
しかもなんか微笑んでる気するし。
見られるのが気持ち悪すぎて、残っていたブラックコーヒーを一気に飲んでやった。
「あれ、もう飲んじゃったの?急がなくてよかったのに」
「アンタが見てくるからでしょ」
「見てたらダメ?」
「気持ち悪い」
「それは結構傷つくな~」
そう言う割に全く傷ついてなさそうだけど。
「じゃあ帰ろっか。俺らの家に♪」
「…………………」
……気持ちワル。
もう一度心の中で呟いておいた。