酔いしれる情緒
その言葉に春は一瞬目を丸くさせたけど、
数秒経てば黒いオーラも無くなり
スっと元の顔、
ニコニコと笑顔になって
「凛も割と俺に依存してるよね」
私の本心を見透かすように、
目を細めて私のことを覗き込んでくる。
「……前にそう言ったはずだけど」
「それ以上にだよ」
「会えてない間におかしくなったんじゃない?」
「俺?それとも凛が?」
「お互いに」
言うと、春は口元に綺麗な弧を描いて笑った。
なんだか「満足」と言っていそうな、そんな顔で。
「ごめんね。苦しかったよね」
ゆるりと首元にあった手が離れてく。
少しばかりの圧迫感がなくなると、熱くなったその部分にやっと空気が触れた。
「初めて人の首掴んだかも」
「そうじゃないと困る」
「凛にしかしないよ」
「もう一生やらせないけど?」
あんなの、何度もやられてたまるか。
「どうだろうね」
落ちたウィッグを拾い上げると春はそれについた砂埃を軽く叩き落とす。
「こうでもしないと、凛、ふらっとどこかに行ってしまいそうだから」
「は?なにそれ。誰にでもついてくような簡単な女だって言いたいの?」
「……今日だってアイツと来てたし」
「あれは偶然に偶然が重なっただけで、私も求めてなかったことなんだってば」
唇を尖らせるコイツは私に不安を丸出しにして、何を言っても言い訳のように取られているような感じが非常にめんどくさい。
ふらっとどこかに行ってしまいそうなんて…
そんなの、どちらかといえば。