酔いしれる情緒
「俺はこのままお披露目してもいいんだけどね」
「私は嫌。
記事になんて書かれるか分からないし。」
「『路地裏で一般女性と密会!』
とかそんなんじゃない?
……あ。でもこれ、見られちゃうね」
春が言うこれとは、
私の首元に散らした赤い痕のこと。
1つ……いや、2つも付けたんだからコイツ。
「もっとやばいこと書かれちゃいそう」
そう言いながらも反省している素振りはないし、寧ろニコニコと笑って愉しそうだし。
「とにかく……私がどれだけアンタに依存してるか分かったでしょ。不安になる理由もない。だからこれからはこうやって逃亡することも会いに来るのも禁止。きまりはちゃんと守って。分かった?」
「は~い」
「(分かってないな)」
ケロッとした顔を見せて私に笑顔を向ける春は見るからに気乗りしないといった感じの返事。
なんで私が必死になってコイツを説得しなければならないのか。
橋本さんに重要な仕事を投げ渡されたような気もする、けど。
「……アンタが橋本さんのことを信用するとかしないとか。それはアンタ自身が決めることだから口答えはしないけど、」
橋本さんが春に伝えてくれと私に伝言を言い渡したこと。
もしそれがこの先言った通りになるなら、
「『その時が過ぎれば結婚でもなんでも好きにすればいい』って。
そう言ってくれた橋本さんを私は信じる。」