酔いしれる情緒
「この前は車だったからちょっと道違うけど、歩きだとここを曲がってそのまま真っ直ぐ歩けば着くからね。」
カフェを出た私は、コイツの後を追うようにしてついていく。
言われた通りに前を見れば、
なんだかとてつもなく高い建物が目に入った。
(こんな建物あったんだな……)
この土地に住んで結構経つけれど、今になってやっとその存在に気づいたかもしれない。
「何階だったか覚えてるよね?」
「32階」
「そー!さすが凛!えらいね~」
「(なめられてる?)」
それぐらい覚えられるわ。
「じゃあもう大丈夫だね。
俺がいない時はこの道を通って帰るんだよ?
間違っても裏道から帰らないでね。特に夜なんかは人気の多いこの道から帰ること。
分かった?」
幼い子供を注意するような、
そんな言い方で言われたソレ。
………腹が立つ。
「心配されなくても、私24歳なんだけど。
危ないとか危なくないとか余裕で分かるし、
自分の身は自分で守れるから。」
「あーごめんね?
気に障っちゃったみたいで。
悪気はないんだけどさぁ
もしここで俺が凛のこと襲ったとしたら、
凛は逃げられると思う?」
「なに、試してんの?」
「試してるよ」
ニヤニヤと笑いやがって…
細める目元を見て、ソレを理解する。