酔いしれる情緒




「……………………今、なんて言った?」


「橋本さんを信じるって言った」


「違う。もう少し前」


「……どうせ聞こえてたんでしょ」


「いや……そうなんだけど。信じられない言葉だったというか……本当に橋本さんがそう言ったの?」


「私の聞き間違いじゃなければね」


「…………………」






ポカンと口を開いたままの春はどうやら驚いている様子。






「別に驚くほどでもないでしょ……あの決まりは3年だけなんだから、橋本さんが言ってることも決まり通りなんだし」


「違うんだよ、あの人結婚とか気持ちよく許可するような人じゃないからさぁ…」


「なにそれ。あの人親か何かなの?」






娘の結婚を反対する父親みたいだなと思ってしまって思わず笑ってしまう。






「だとすると俺を息子だと思ってるのかな」


「さぞかしヤンチャな息子だと思われてそうね」


「だったらあの人は口煩い親バカだよ」






それ、あながち間違ってないかも。






「そんな人が結婚でもなんでも好きにすればいいなんて言うかな…」






なかなか信じようとしないコイツは本当に橋本さんのことを信用していないみたいで。






「私が嘘つくと思う?」


「凛を疑ってるわけじゃないよ。ただ、その場をしのぐためにあの人が適当についた嘘なんじゃないかっていう疑いはある。」







仮にも所属している事務所の社長だというのにこの信用の無さ。



一体あの人は春に何をしてきたのかと、逆に知りたい。

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