酔いしれる情緒
「あのさ、春」
「ん?」
「もしあの人が白を切るつもりなら、その時は私が黙ってない。」
「なに…どうにかしてくれるの?」
私は春の頬を手で挟み、その綺麗な瞳を見つめて言った。
「私がアンタを攫いに行く。それがどこであろうと、さっきの記者がいようとカメラを向けられようと関係ない。
全責任はあの人にあって、
約束はちゃんと守ってもらうから」
「…………かっこいいこと言うね」
「冗談だと思ってるでしょ」
「思ってないよ」
春の大きくて綺麗な手が私の手の上に被さる。
「私、本気だから」
「うん」
「だから春も本気で決まりを守って」
「うー…ん」
「そうすれば、
またアンタのそばにいられるんだから」
もう離れること無く、ずっとそばにいられる。
毎日顔を合わせて
『おはよう』と言い合って
触れたい時に触れられる、毎日がそんな距離に。
「その時がすごく楽しみね」
ニコリと満面の笑みを見せる。
作り笑いだとかそんなんじゃなくて、
本当に心の底から出た笑みだった。