酔いしれる情緒
「あぁでも着いちゃったね。残念。」
何を残念がっているのか全然わからないが、
気づけばあのタワーマンションに着いていた模様。
もっと時間がかかると思っていたけど、意外と近いんだな。
この前とは違う入り口から入ると
そこには大きな自動ドアが設置されていて
「オートロックだから、まずここで鍵使ってね」
言われた通りに鍵を使うと閉まっていたドアが開く。
(ここがエントランスになるのか…)
綺麗すぎるこの場になかなか落ち着かない。
エントランスだというのに
めちゃくちゃデカいソファーがあるし
なんか水が流れているし、ピアノだってある。
こんなところで誰が弾くんだろう?
まず本物なの?
飾りとして置かれているのか?
「凛? 何してんの、行くよ~」
コイツはもう見慣れているのか、
そのことについては何も触れないし、スタスタとエレベーターの方へ歩いて行ってしまう。
私にとっては初めての空間で、一般とはかけ離れたこのエントランスはツッコミどころ満載なんだけど。