酔いしれる情緒



「じゃあ私補充してくるね。レジ任せていい?」


「了解っす~!」





店内を周り、本の整理や補充始める。



補充といってもほとんどするところがないけど、お客さんがいる今は動いてないといけないし。



店主みたいにお客さんが店内にいながらも堂々と座って本を読むなんてこと、私には絶対出来ない。





絵本コーナーに辿り着くと無意味にも絵本同士の場所を入れ替えてみたりしてみる。



こういうのやってる感?っていうのかな。


補充する場所ほとんどなかったんだから仕方がない。




そんなやってる感を出す私の元に女子大生らしき人が2人やってきた。



どうやら参考書を探しているみたいで、その場所まで案内する。





「この辺りになります」


「あ、ほんとだ!ありがとうございます!」





ぺこりと頭を下げる2人に私も軽く頭を下げて笑顔で返した。



ちょうどその時に少なくなっていた教材を見つけ、女子大生2人がいる通りと同じ場所で補充を始める私。





参考書コーナーの近くには雑誌コーナーが。




そのせいでだろうか、女子大生達が参考書そっちのけで例のあの会話を始めた。





「そういえば!一ノ瀬櫂、熱愛出たよね~」


「そうそう!あれびっくりしちゃった~ 写真撮られた訳じゃないけど、たぶん事実だよね?事務所言及してないしさ」


「なんか数ヶ月前からインスタに交際匂わせみたいなのあげてるらしいよ」


「うっそ!マジ!?
そんなのほぼ確定じゃん!」





1つの携帯を2人で覗き込んでいる女子大生。たぶんそれは話に出てきたインスタをチェックしているんだと思う。



その交際匂わせという証拠を見たのか「ほんとだ~」と呟く女子大生に私の胸はチクリと痛くなる。





ああ、事実なんだと。

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