酔いしれる情緒
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「この前の小説、取りに来たよ~」
言っていた通りに、1週間後の同じ時間にこの男はやってきた。
前と同じで大きめマフラーに丸メガネ。
「あぁ、ありますよ。」
用意していたものを渡せば
「へぇ…コレがおねーさんの好きな小説か~」
意外。とでも言いたそうな感じ。
「800円です。」
「はいはーい、ちょっと待ってね~」
ポケットから財布を取り出していたにも関わらず、中からはちょっとクシャクシャになった千円が出てきた。
「はい、コレで。」
「…………………」
いや財布の中に入ってたくせに、なんでクシャクシャなんだ。
そう思いながらもお釣りの200円をレジから取り出す。
手動のレジに千円を入れるけど、
ほら。
クシャクシャだから入れづらいじゃないか。
「200円のお返しです。」
「どーも」
レシートも渡せば「レシートはいいや」って返される。
「ありがとうございました~」
変な客だったなー
まあ、もう関わる事ないか。
─────そう思っていた矢先。
「!!」
カウンターの上に置いていた手を
この男は何故か掴んで引っ張ってきた。
軽く引かれたソレに、自然と身体が前のめりになる。